「正直、業者に騙されてきたから、もう信じない」── 福井の電気工事社長が業務AIを半信半疑で導入した6ヶ月後の本音
福井市内の電気工事会社A社(社員10名・年商3億円)。社長のY氏は、過去3年でSaaS2社・コンサル1社・研修1社に投資して、すべて失敗してきました。求人広告は月10万円で応募ゼロ、社員の徹夜は常態化。「もう業者は信じない」──最初の打ち合わせで、Y社長はそう言いました。
本記事は、そのY社長が業務AIを半信半疑で1ツールだけ試した6ヶ月後の本音です。福井の中小企業オーナーが業務効率化・DXを検討する際の判断材料として、成功談だけでなく失敗談3つも含めて記録しました。社名は匿名化しています。
☑ 福井県内の建設・電気工事・製造業のオーナー
☑ 過去にSaaSやコンサルで失敗した経験がある方
☑ 業務AI・DXを検討中だが、何から試すか迷っている方
☑ 補助金を使ってリスク低く導入したい方
目次
1. 導入前のA社の状況
A社は福井市内の電気工事会社。社員10名、年商3億円規模。導入前の状況は、福井県の中堅電気工事業に典型的と言える状態でした。
- 見積作成はベテラン営業1名(Hさん)が独占。Hさんが休むと営業が止まる
- 写真台帳作成は40代社員1名(Tさん)が担当。納品前夜の徹夜が常態化
- 主装置選定もベテラン技術者1名による属人化
- 求人広告は月10万円を3年間続けて、応募ゼロ
Y社長の認識は「現場の人手不足」でしたが、実際の真因は「事務処理の人手不足」でした。詳しくは関連記事「福井の人手不足、9割は別の問題です」を参照ください。
2. 3年間の試行錯誤 ── 求人広告・派遣・SaaSすべて失敗
Y社長が過去3年で試した施策は以下のとおりです。
| 試した施策 | 結果 | 累計コスト |
|---|---|---|
| 求人広告 | 3年で応募ゼロ | ¥360万 |
| 派遣社員 | 3ヶ月で離職 | ¥80万 |
| 大手SaaS(月¥3万) | 使いこなせず半年で解約 | ¥18万 |
| Excel自作テンプレ | 担当者異動で属人化崩壊 | ─ |
| 写真台帳外注 | 差し戻し多発で1年で中止 | ¥180万/年 |
累計でも数百万円の投資。それでも社員の徹夜は減らず、Hさんは「辞めたい」と月3回ペースで口にしていました。
3. 最初の戸惑い ── 「もう信じない」から始まった対話
当社が最初にお会いしたのは、Facebook経由のコンタクトがきっかけです。初回ヒアリング2時間。Y社長は冒頭で「もう業者は信じない、って気持ちが半分以上ある」とはっきり言われました。
当社からの提案はシンプルでした。「無料で1ツールだけ試して、気に入らなければお金は不要です」。3点セットを一気に売り込むのではなく、Photo Ledger(工事写真台帳AI)1本だけ、IT導入補助金を使って実質¥2.5万円で。
「セールスがしつこくない、ってのが一番効いた。試して、ダメだったら諦める。気に入ったら続ける。それでいいって言われて、初めて『話してみよう』って気になった。」
── A社 Y社長
4. 1ツールだけ試した6ヶ月の変化
導入したのはPhoto Ledger単体。月12時間かかっていた工事写真台帳作業を、AIが黒板OCRで自動分類して台帳に転記する仕組みです(詳細はPhoto Ledgerの中身を全部公開した記事参照)。
1ヶ月目:写真台帳 12時間 → 8時間
慣れの問題で、いきなり91%削減とはいきません。4時間削減程度。Y社長は「これでもう少し下がるなら、ありかな」と判断。
3ヶ月目:Tさんが「家族と晩飯食べた」と言った
納品前夜の徹夜が消えた瞬間。Tさんから「久しぶりに家族と晩飯食べました」とLINEが来たそうです。数字以上に、現場の空気が変わった瞬間でした。
6ヶ月目:91%削減・徹夜消滅・受注3.6倍
最終的に、写真台帳作業は12時間→1時間(▼91%)、納品リードタイムは3日→4時間、納品ミスは月5件→0件、社員の徹夜は月8回→0回に。
徹夜月8回・「辞めたい」発言月3回
「辞めたい」発言消滅
5. 予想外だった3つのこと
予想外①:Hさん(ベテラン営業)が「ありがとう」と言った
属人化解消ツールを入れると、ベテラン社員が「俺の仕事を奪うのか」と反発するのが定番です。当社もそう予想していました。ところがHさんの反応は逆でした。
「俺の頭の中、そのままじゃん。これ。後輩に教えるのが楽になった。あと、初めて安心して有給取れた。10年ぶりに。」
── A社 ベテラン営業 Hさん
属人化は本人にとっても精神的負担だったのです。「俺がいないと回らない」というプレッシャーから解放されて、初めて休めた。これは設計時に想定していませんでした。
予想外②:受注率が上がった
事務効率化の目的は時間削減でしたが、副次効果として営業数字が上がりました。
| 項目 | 導入前 | 6ヶ月後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 月の見積数 | 12件 | 36件 | 3.0倍 |
| 受注率 | 18% | 22% | +4pt |
| 月の受注件数 | 2.2件 | 7.9件 | 3.6倍 |
Y社長の分析:「お客様の『すぐ見積欲しい』に応えられるようになった。競合に取られなくなった。」
予想外③:社員の離職意向が消えた
導入前の「辞めたい」発言は月3〜5回。6ヶ月後はゼロ。徹夜消滅で家族時間が確保でき、社員の表情が明るくなり、結果として採用広告月10万円が不要になりました。
6. 失敗したこと3つ(隠さず書きます)
成功談だけ書くと信頼を失うので、失敗も書きます。検討中のオーナーはここを参考にしてください。
失敗①:3点セットを一気に入れて社員が混乱した
3ヶ月目にPhoto Ledger効果が出たので、勢いで他2ツールを一気に追加導入しました。結果、社員が複数ツール並行学習で混乱。1ツールずつ順番に導入したほうが定着が速いという教訓を得ました。
失敗②:Excel連携の初期設定で時間取りすぎた
A社の10年前のExcel仕様(マクロ・特殊な書式)との互換性で詰まりました。事前に既存のExcelテンプレ確認が必須です。
失敗③:操作研修が薄かった
当初計画は2時間でしたが、60代の現場社員が触れるレベルまで持っていくには6時間以上必要でした。「年配の社員に教える時間」は最初から多めに見込むべきです。
7. Y社長からの3つのアドバイス
ポイント①:「うちは特別」と思わないこと
「うちは電気工事だから」「うちは小さいから」── そう思いがちですが、現場仕事の裏にある事務作業はどの業界でも共通。AIが効きます。
ポイント②:1ツールから試すこと
一気導入は失敗します。1ツールで効果を確認、社員が慣れたら次、の順序が最速。
ポイント③:地元の業者を選ぶこと
Zoom越しの東京業者より、訪問対応できる距離の業者が、困った時に頼りになります。福井市内の業者は、6ヶ月で7回現場に来てくれた。これは大きい。
8. 数字でまとめる6ヶ月
| 項目 | 導入前 | 6ヶ月後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 写真台帳作業 | 12時間/月 | 1時間/月 | ▼91% |
| 見積作成(1件) | 30分 | 5分 | ▼83% |
| 月の見積件数 | 12件 | 36件 | 3.0倍 |
| 受注率 | 18% | 22% | +4pt |
| 月の受注件数 | 2.2件 | 7.9件 | 3.6倍 |
| 納品前の徹夜 | 月8回 | 0回 | 消滅 |
| 「辞めたい」発言 | 月3回 | 0回 | 消滅 |
| 導入実質負担 | ─ | ¥7.5万 | 補助金後 |
| 投資回収期間 | ─ | 約10日 | ─ |
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